オリバー・ビア:Life, Death and Tennis

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Life, Death and Tennis, 2015, Video, loop. Courtesy Galerie Thaddaeus Ropac, Paris / Salzbourg ©Oliver Beer

 

オリバー・ビア:Life, Death and Tennis

Daiwa Foundation Art Prize 2015 Winner

11.7 – 28. 2015

 

2015年11月7日[土] – 11月28日[土]
オープニングレセプション: 11月7日[土] 19 – 21 pm
Open: 12 : 00 – 19 : 00 日祝休

 

Installation view

 

この度、800名を超える応募の中から2015年度大和日英基金アートプライズを受賞したオリバー・ビアの日本初個展を開催致します。

ビアは1985年、イギリス・ケント生まれ、パリ及び英国ケント在住。作曲家と美術家の両方の学位をもち、建築空間と人間の声の共鳴を試みるプロジェクトが、パレ・ド・トーキョーやポンピドゥーセンター、MoMA PS1で紹介されるなど、近年高い注目を集めています。国内では、エルメス財団により行われた「コンダンサシオン」展(2014年)に出品されました。

本展では、ウィンブルドン決勝戦のテレビ放送を編集した新作《Life, Death and Tennis》(2015年)をはじめ、球体ガラスに閉じ込められた金の中耳骨《Silence is Golden》(2013年)、切断した一本のパイプ《This is a Churchwarden Pipe》(2014年)など、視覚と聴覚のはざまに展開するビアの多様な制作活動を概観いたします。本アートプライズ審査長であるジョナサン・ワトキンスは、本展のために寄せた文章中で、「オリバー・ビアの作品の多くは、不在を象っている」と述べています。

本展は浅草に10月にオープンしたスペース「ASAKUSA」との共催です。この機会に、ぜひとも両展示に足をお運びください。

 

 

オリバー・ビア、生と死、そしてテニス

オリバー・ビアの作品の多くは、不在をかたどっている。本展に寄せられる新作《Life, Death and Tennis》(2015年)は、英国人男性として77年ぶりにウィンブルドン決勝戦を制したアンディ・マレーのテレビ放送から抽出、構成されている。プレーヤーが驚くべきアスリートの饗宴を演じるのを私たちが手に汗をにぎり観覧する間に、ビアの動画編集は手早く、力強く行われる。この作品で私たちに見えないのは肝心のテニスボールだ。どの場面でもボールがエアブラシでかき消されているために、私たちは競技の焦点を見ることがなく、それによってテニスの試合が、余りにも人間的な努力と感情の不条理なパフォーマンスとなって抽象化している。

ビアは、アントニオーニの映画《Blow-up(邦題:欲望)》(1967年)のあの終局― 存在しないラケットとボールでテニスを興じる白顔のパントマイム集団― を意図的に引用している。そこにあるのは不可視な状態と、いうまでもない静けさだ。ビアが、視覚的な体験と同じくらいサウンドに関わっている作家であるために、このことがいっそう強く意識される。

Life, Death and Tennis》(2015年)における音の欠如は、《Silence is Golden》(2013年)の主題となる聴力の不能に呼応している。積まれた紙を押しつける球体ガラスの3つの錘ひとつひとつに、中耳の耳小骨のいずれか― 槌骨、鐙骨、砧骨― を象った、実寸大の金のレプリカが入っている。バラバラになった小さな骨が、どんな素材よりも私たちを惹きつける金の効果によって魅惑的に視覚に訴えるが、それはクリスタルの冷たい静けさのなかに閉じ込められている。

This is a Churchwarden Pipe》(2014年)では、柄の長い煙管を切り割いて石膏の壁に埋め込み、煙管のかたちとその内側の構造を切断面からまざまざと見せつける。マグリットのパイプの不在《これはパイプではない》(ceci n’est pas une pipe)への言及はスマートで、私たちは本物の煙管が平面になった姿をみることになる。そうして、本物の煙管が煙管のドローイングとなり、同時に煙管であり煙管ではない状態に置かれる。

迷いがなく鋭い切断は、美しくそして残酷だ。明らかにすると同時に破壊的にもなりえる。フランスの高速鉄道「グランドリーニュ」の線路をそぎ落とした2つの断片《Modular Rail Sculpture》(2014年)は磨かれて、数えきれない旅路を刻んだ風格や、旅中の乗客の重さを一手に受ける鋼製車輪の運動を解き明かしながら、それぞれの物語、それぞれの始点と終着点をもつ個々人の存在をあぶり出している。彫刻はあっという間に過ぎゆく人生に捧げられたモダニスストの記念碑のように、私たち誰もの最終目的地である不在を斜かいに指し示す。ホルバインの傑作《The Ambassador (大使たち)》(1933年)に現れる頭蓋骨― よく知られたメメント・モリ― を、作家は剽窃する。そして、展覧会のどこかに現れるその左証が、ビア作品における根源的な立ち位置を鮮明に表している。

ジョナサン・ワトキンス

 

 

オリバー・ビア(1985年英国ケント生まれ)は、音の特性をある空間や視覚との繋がりにおいて考察し、感情や知覚の共有を試みる作品で知られる。人間の声と建築との関係性に焦点を当てた映像プロジェクトをはじめ、インスタレーションや彫刻など制作は多岐にわたる。
パレ・ド・トーキョー(パリ)、センター・ポンピドゥー(パリ)、MoMA PS1(ニューヨーク)、リオン・ビエンナーレ(リオン)、オックスフォード近代美術館(オックスフォード)、WIELS現代美術センター(ブリュッセル)、エルメス財団(パリ、東京、ソウル)、フォンダシオン ルイ・ヴィトン(パリ)ほか展示歴多数。
アカデミー・オブ・コンテンポラリーミュージックにて現代音楽の学士号、オックスフォード大学ラスキン・スクール・オブ・ドローイング・アンド・ファインアートにてファインアートの学士号をそれぞれ取得後、パリ第3大学(新ソルボンヌ)修士課程にて映画理論を学ぶ。パリおよびロンドン在住

Oliver Beer website: http://www.oliverbeer.co.uk

 

同時期開催:

Deconstructing Sound

アサクサ

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2015年11月8日[日] – 12月6日[日]
Open: 12 : 00 – 19 : 00 土日月祝のみ開廊 平日予約可

Curated by Asakusa and Matthieu Lelievre (Galerie Thaddaeus Ropac, Paris)

東京都台東区西浅草1-6-16
http://www.asakusa-o.com

 

トーキョーワンダーサイトレジデンス オープンスタジオ
2015年11月14日[土] 11:00 – 17:00

プレ・オープン・スタジオトーク
2015年11月12日[木] 15:00 – 17:00
オリバー・ビア(アーティスト)、ジョナサン・ワトキンズ(IKONギャラリー 館長)、片岡真実(森美術館 チーフキュレーター)
〒130-0023 東京都墨田区立川2-14-7 アーツ菊川1F(オフィス501)
トーキョーワンダーサイトレジデンス

 

講演
倉敷芸術科学大学 芸術学部 川上研究室
2015年11月16日[月] 10:50 – 12:20
〒712-8001 岡山県倉敷市連島町西之浦2640
倉敷芸術科学大学 レクチャー・ホール

 

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