五月女 哲平:絵と、 (gallery αM、東京)

 

 

7 Apr – 2 Jun 2018

 

アーティストトーク: 4月7日(土) 18:00 – 19:00
オープニングパーティー:4月7日(土) 19:00 –

 

αMプロジェクト2018
絵と、 Painting and …

キュレーター:蔵屋美香(東京国立近代美術館 企画課長)

会期1: 2018年4月7日(土)-6月2日(土): 五月女哲平
会期2: 2018年6月16日(土)-8月10日(金): 藤城嘘
会期3: 2018年9月1日(土)-10月27日(土): 村瀬恭子
会期4: 2018年11月10日(土)- 2019年1月12日(土)(冬期休廊12/23~1/7): 千葉正也
会期5: 2019年1月26日(土)-3月23日(土): 中村一美

会場: gallery αM ギャラリーアルファエム

〒101-0031 東京都千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F
tel: 03-5829-9109  fax: 03-5829-9166
日・月・祝休 11:00~19:00
http://gallery-alpham.com

 


「逃げも隠れもせず隠す:五月女哲平の作品について 」 蔵屋美香
http://gallery-alpham.com/exhibition/2018_1/


美術手帖に、美術批評・理論の菅原伸也さんによる批評文が掲載されました。
「絵、層なの? 」 菅原伸也 評
https://bijutsutecho.com/insight/14325/


 
 

「絵と、 」 蔵屋美香

今年の連続企画は絵画を取り上げます。これはギャラリーを運営する武蔵野美術大学からのリクエストです。お受けするかどうか迷いました。絵画はとても好きですが、わたし自身は近ごろ絵画をどう考えてよいのかわからなくなっているからです。個々の作品や作家によいなと思うものはあっても、ムーヴメントの盛り上がりやメディウムとしての新しい可能性を感じることは、特に日本国内について難しくなったと思っています。

こうした気分はわたしの場合、はっきりと3.11以後に強くなったものです。震災から7年が経ちましたが、この間社会では、異なる意見の排除や経済格差の拡大が無視できないものとなり、政権や国際関係のありようも大きく変化しました。

いま仮に、これらのアフターマス(余波)も含めてカッコ付きの〈震災〉と呼んでみることにします。この〈震災〉に呼応して、日本の美術界では社会に対して率直に発言する作品が目立つようになりました。その際、写真や映像、プロジェクト型の作品などは、メディウムがもともと持つ現実へのコミットの度合いの高さから、かなり率直な反応を示してきたように思います。しかし絵画は、絵具やキャンバスという物質のレベルはさておき、原理的には現実との関わりを持たずに色や形を組み立てることができます。もちろん政治的主題を直截的に描くこともできますが、関東大震災後の1920-40年代、戦後の1950-60年代にも試みられたこのやり方は、しばしば物事を単純化し、プロパガンダ化する危険を伴います。

絵画が現実に関わるよりよい方法とは。

あまりにベタな問いですが、この疑問を明るみに出し、真正面から扱わない限り、わたしのもやもやは晴れそうもありません。ついでに、「絵画」という一種の業界用語を使うと、結局問題が美術の枠内に収まってしまいそうなので、タイトルはあえて「絵」という言葉を使いました。

今回選んだペインターは、いずれも「絵と」現実を絵画ならではの方法で切り結ぼうとしています。「絵と」社会的出来事、「絵と」 記号、「絵と」感覚など、「絵と、」の後に入る要素はさまざまです。この企画がわたしの、そして同じような疑問を抱えた人たちの、もやもやをはらす力強いきっかけになればと願っています。