磯谷 博史 参加:#5 Politics of Space(statements、東京)
10.15 – 11.13, 2016
#5
Politics of Space
2016年10月15日(土) – 11月13日(日)
クロージングパーティー: 2016年11月13日(日) 18:00-20:00
時間:水 – 日 13:00 ‒ 20:00、月火休
会場:statements (〒150-0011 東京都渋谷区東 2-27-14,102)
HP:www.statements-tokyo.com
参加アーティスト
磯谷博史 | 河原温 | 小山友也
協力
AOYAMA|MEGURO | 稲垣明彦 | 黒木健一
statementsは10月15日(土)から11月13日(日)まで、「Politics of Space」展を開催いたします。 本展は、アートが語られる場についての企画となります。
ミニマリズム以降、アートを美術館やギャラリーといった、制度的な場に限って記述していくことが困難になりました。それは、社会の変化にともない実社会から乖離した権威的なアートの場に対する、アーティストの省察に他なりません。そうしたモダニズムの自己批判の視線は、絵画におけるキャンバスのフレームを出発点とし、制度としての展示空間や、言説的な空間へと向けられます。ある者は同語反復として繰り返されるキャンバスとフレームの矩形の呼応を足がかりに固定化したフレームから飛び出し。ある者はギャラリー空間と屋外との間にある価値生成における格差について問いかけます。そして、またある者は文化人類学者として、調査、発掘、分析を通して生成される言説の空間における価値決定の場の提示を試みました。
こうした状況は社会的な権威によって占有される制度の場と、アーティストが感じるリアルな場との間に生じる齟齬に起因し、制度とリアルの場との絶え間ない対話にほかなりません。そして場というものが、ただそこに在るのではなく、社会的に生産されるものであるならば、アーティストはその時代ごとに、自らのリアルな場を生産していくことによって、社会的に存在する芸術のあり方を考えてきたのではないでしょうか。
今回紹介する3人のアーティスト達は制度化される場についての独自の視点と方法を持って取り組んでいます。 磯谷博史は1000日間使用した靴の裏をスキャンし、自身の身長にまで引き延ばした写真として定着させた後、実際の靴の上に置き展示をします。そこには異なる制度と様々な特性を与えられた場所を、1人の人間が往来した痕跡が記録されており、私たちが普段生きる中で、様々に制度化された場を歩き社会の中を漂流している存在であることを浮き上がらせます。河原温は美術館やギャラリーから遠く離れた場所から、I got upとつぶやくようにポストカードを送り、創造主として振舞うアーティストの主体が不在であることを示しています。 ポストカードが展示される時、ギャラリーには権威的なアーティストの主体性はなく、そこには単なる見知らぬ他者が朝起きた事の報告という即物的な報告がなされているばかりです。そこでは、他者としての空虚な主体が見知らぬ場所に存在しているのかもしれない可能性とギャラリーや美術館という制度に介入する他 の場の存在が提示されています。小山友也はある場所から、2人の協力者と偶然そこに居合わせた数人の他者によってギャラリーまで運ばれる様子を映像化します。その行為はアーティストによって発見、表出された新たな場が結局、ギャラリーや美術館といった制度的な場へと再び回収されていくことがアイロニカルに 示唆されているとともに、アーティストが失った制作者としての主体性が他者との関わりの中でどのように再び現出するのかが試されています。アーティストが どのように制度としての場を捉え、省察を与えているのか、その一端をこの機会にどうかご高覧下さい